そして翌日。
祝典の始まりを告げる花火が空に打ち上がった。
本来なら夜のはずだったから、その色彩はさぞまぶしく
人々の目に焼き付くことだったろう。
青空に溶け込むように、火花は消えていった。
会場は王都の中心にある王城だった。
広大な敷地を誇る庭園に、半円のドームが置かれている。
総大理石で作られたその中に、守護聖達は座っている。
すぐ隣には王家の一族。みな心からのもてなしを振る舞ってくれている。
「本日、ここに炎、水、夢の守護聖様方をお迎えできたこと、
心よりお喜び申し上げます」
国王が脇に置かれているスタンドマイクで開会の挨拶と共に、感謝を述べている。
ドームのちょうど中央に守護聖達の席が設けられている。
国王側からオスカー、リュミエール、オリヴィエとなっている。
三人とも今日は守護聖の正装をし、儀礼的であるとは思うが、畏まり、
聖地を代表する者として完璧に振る舞っている。
長い国王の言葉の間ずっと、リュミエールは楽団がどこにいるのか気になっていた。
結局会場図を大神官から見せてもらえなかったのである。
ドームより低い芝生の上では高官達が整然と並び、
それよりもっと遠くに名士達がいるはずだ。しかし、楽団の姿がない。
続いてオスカーが、聖地を代表して女王陛下から賜った親書を読み上げ、
国王に渡した。
「これからもより一層の惑星の発展と調和を望んでいる」
その後、数人の人々が挨拶に立った。
「リュミエール、あそこ」
そっと膝をオリヴィエが叩いて、視線の先を見るように促した。
ちょうど庭園の左側、ドームのほど近くに楽団が準備を始めているところだ。
みなこちら向きで座席やら楽器の支度を整えている。
『あの中に、フィリアがいる』
リュミエールは鼓動が早まるのを感じた。
挨拶が終わると、聖地への贈り物として惑星でとれた色々な産物が進呈される。
それらの一つ一つの紹介を受けつつも、リュミエールは楽団が気になる。
それを知っているので、プレゼントを受け取って感謝を返すのはオリヴィエ一人が
受け持っている。オスカーとしては不満なのだが、ここは目をつぶっている。
『いた!』
三列目に管楽器の一団が入ってきた。
フィリアを容易に見つけることはできたが、反射的にすぐ目を反らしてしまった。
『やはり、怖い。でも‥‥』
もう一度、勇気を振り絞って彼女を見た。
オスカーもオリヴィエも、ちょうど同時に彼女の姿をとらえた。
そして三人の視線を受け、フィリアもまた顔を上げてこちらを見た。
リュミエールは、顔から血の気が引いていくのを感じた。呼吸も苦しい。
しばらくフィリアは、フルートを膝に置いたまま、じっとリュミエールを見つめていた。
リュミエールもまた、彼女から目を離すことができなかった。
永遠のような一瞬。
オスカーもオリヴィエも、フィリアから目を離さず、
彼女の次の行動を見届けようと固唾を呑んでいた。
突然、彼女がにっこりと笑った。
まるで今にも手を振ってくるのではないかという親しげな微笑み。
リュミエールがはっとなった時には、すでにフィリアはフルートの手入れに戻っていた。
その笑顔に、オスカーとオリヴィエも横目で目を見交わし、軽く頷く。
あれが答えなのだ。リュミエールの悩みに対する答え。
『フィリア、許して下さるのですね』
リュミエールは心の中で呼びかける。
チューニングの音が響く中、指揮者が軽く演奏の挨拶をし、
昨日リュミエールとフィリアが練習した曲目すべてを庭園に響かせた。
そのハーモニーは空気を振るわせ、全ての音の調和が整い、心に染み渡る。
身体全体に心地よい。
その音色はこの惑星の人々の心を象徴しているのだと、三人は思った。
また、少女の穏やかで爽やかな気持ちも象徴しているようだった。
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