アンジェリークへ
『新宇宙の女王陛下』
君の新しい呼び名だね。
おめでとう、アンジェリーク。
心からの賛辞を君に送るよ。
君はそれに値するだけ、頑張ったのだから。
新宇宙はきっと、君の愛情に育まれて美しいところとなるだろう。
僕には分かる。
君を教え、導いてきたこの僕が言うんだから。
きっとそうなる。
アンジェリーク。
君は常に、僕に新鮮な驚きを与えてくれた。
常に変わる君の表情を見るだけで、僕の創作意欲を掻き立てられた。
今度は何で表そうか。いつもそんなことを考えていたよ。
詩?
絵画?
彫刻?
それとも旋律で?
君は知っているかい?
僕の、君に対する感情が初めと変わっていたことを。
ただの暇つぶしだと思った女王試験の教官業務が、
僕の、喜びに変化していったことを。
そうだね、例えるなら。
何の変哲もない、小さくて真っ黒な種。
それだけ見ているならなんだか分からない、ちっぽけな物。
たいして興味を引かない、ありふれた形。
でも土に植え、水をやり、育てるなら。
そう、美しい花が咲く。人を魅了してやまない、美しい花に。
君だよ、その花は。
ただの女の子だったはずの君が、どんどん変わっていく。
僕の教えだけではない。
君の周りで起こるすべての出来事が、君を養い、育てたんだ。
そして・・・魅力的な人になった。
僕はこの変化に目を見張ったよ。
できれば、ずっと見ていたい。毎日見たい。
表情だけにとどめたくない。その、心も知りたい。
心の変化も、僕は知りたい。
僕は君の心にどんな変化を与えているのだろう。
君は、僕をどう思っているんだろう。
毎日君に会うことが僕の喜びだった。
おかしいかい?
他人に無頓着だと言われてきた、この芸術家が。
たった一人の少女にこんなにも心惹かれるなんてね。
そして、君は女王となった。
眩いばかりの光を放つ、芳しい花は、宇宙の女王になったんだ。
僕の手の届かない場所に、行ってしまうんだ。
僕は。
いや、書かないよ。
今は書きたくないんだ。
もしも再び会えた時のためのセリフを残させておいてくれないか?
僕はこの別れを『永遠』だなんて思わない。
僕たちはきっとまた会える。
だから、その時になったら僕の気持ちを伝えるよ。
君に抱く、この淡い感情を。
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そして、二人は出会った。
「宇宙の危機、ね」
セイランは窓辺に佇むアンジェリークの背中に呼びかけた。
「再び君に出会えて嬉しいけど、
こんな時ではなかったほうが良かったな」
呼びかけられ、アンジェリークが窓を背に振り返る。
セイランはアンジェリークの前に立った。
端整な顔立ちに西日が差し、心なしか上気しているように見える。
宿屋の廊下で二人きり。
夕暮れ迫る、静かな時だけが二人を包む。
「ねえ、アンジェリーク。あの手紙の続きも言わせてもらえないかい?」
アンジェリークはこくりとうなづいた。
「ありがとう。それじゃ」
そう言うやセイランは、アンジェリークの顔を挟むように、
窓に両手をつく。
アンジェリークを逃がさないとでも言わんばかり。
顔を近づけ、今にも息がかかるほどの距離で止める。
険しい表情のまま、セイランの唇は動いた。
「君を愛している」
たった一言だけ。
セイランは静かにアンジェリークに告げた。
そして、その瞳がアンジェリークに語る。
『君の答えを聞かせて』
「私も、セイラン様が大好きです」
「・・・ありがとう」
ふっとセイランは微笑みそして、左腕をアンジェリークの腰に回した。
そして、ぐっと自分の方に引き寄せる。
「新宇宙の女王陛下に口付けてもいいかな?」
答えも聞かずにセイランは、アンジェリークの唇を塞いだ。
柔らかな、甘い感触。
時を止めるほどの幸せと喜び。
アンジェリークの唇を開放してやると、今度は耳元に首を巡らせた。
「今だけでいいから。僕だけの君でいてほしい。
僕のこの激しいまでの感情を、止めさせたくないんだ」
そっと囁くと優しく耳に口付ける。
場所を変え。何度も、何度も。
お互いの存在を確かめるように。
体に、記憶させるように。
芸術家と女王。
二人の時は永遠に刻まれた。
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