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恋のレッスン
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「・・・で、フラれちゃったわけか」
私はコーラのストローをくるくると回しながらそう言った。
目の前には泣きはらして目が真っ赤になっている親友がいる。
そう。今私は彼女のフラれ話を聞いてやっているところ。
もうかれこれ2時間・・・。
泣きじゃくる彼女を慰めながら話を聞いてあげている。

寝ているところをゆうべ遅くに電話で叩き起こされた。
電話に出ると彼女で、ひどく興奮していた。
何があったかとびっくりして聞いていたが、どうやら彼氏にフラれたらしい。
いや、彼氏になってもらう前の、告白の段階でフラれたらしい。
しゃくりあげながら私の親友、マリーはうんうんとうなづいた。
「そっか・・・」
「私より先に好きな人がいたから・・・しょうがないって思うんだけど・・・でも」
なかなか諦めきれないのはしょうがない。何しろ昨日の今日なのだから。
私はそのことを言って慰めてあげることにした。
「時間が必要だよ、マリー。確かにその人はまだあなたの心の中ですごく大きな存在かもしれないけど。
 でも、時間が経てば忘れられるよ?」
「うん・・・。そうね、サーシャ。ゆっくり時間をかけることにするわ」
「それにね!!」
私はちょっぴり大きめの声にした。彼女に自信を持ってもらいたくて。
「その男もダメよねー、マリーはこーんなにカワイイのにさ!
 ふるなんてひどい男よ! まったく!
 それに、マリーのいい所とか気付いてれば、そんなにひどいフリ方なんてしなかったよ、きっと」
「サーシャ・・・」
マリーはちょっとびっくりしたみたい。でも私の勢いは止まらなかった。
「その男よりももっとイイ男見つけようよ、マリー?
 出会いならこれからいっぱいあるはずだから。ね?」
「・・・ありがとう、サーシャ。ふふっ」
さっきまで泣いていたはずなのに、マリーが急に微笑んだから今度は私が慌てた。
「なっ、なに? どうしたの? 何か私、変なこと言った?」
「ううん、違うの。私ね、サーシャのそういうところに憧れてるの」
「憧れ?」
「いつも自信を持っているところ、かな? 私、すぐに人の言葉とかで自信がなくなっちゃうから」
「そうかなぁ。あっ、でも私だった自信がないことあるよ?」
「そうかもしれないけど。でも・・・こうして慰めてくれるぐらい、勢いがあるところが羨ましいのかもしれない」
「あー、まぁ、うん。そうかもねー」

そう。私はいつもこう。
本当は、もっと繊細な心の持ち主だって思ってもらいたいのだけれど、それが回りに伝わらないらしい。
それは私の、勢いのあるしゃべり方がいけないのかもしれないけど。
たまに自分は損だと思う・・・。

私とマリーは学生の頃からの親友で、勢いのいい私とまったく反対で、
おっとりとしたお嬢様タイプのマリーが、私もかわいくてしょうがなった。
だから彼女が悲しんでいれば、力いっぱい励ましてあげたくなったから。
「ありがとう、サーシャ。いつも私の力になってくれて」
「いいのよ、マリー。今度私が励ましてほしい時には、夜中でもマリーに電話しちゃうからね」
「ああっ、それはほんとにごめんね。悲しかったから、つい・・・」
「はいはい、気にしない、気にしない! ほら、早く飲まないとせっかくのミルクティーが冷めちゃうよ?」
「ふふっ、もう冷めちゃってるわよ。それよりサーシャ、あなたはどうなの?」
「どうって?」
「あなたには、付き合ってる人はいないの?」
突然の質問に、私は口に含んだコーラを噴出しそうになった。
なんとかそれをこらえたらノドがヒリヒリして、目の端に涙が浮かんできた。
「けほっけほっけほっ・・・もっ、もうマリーったらびっくりするじゃない!」
「ええっ? そんなに驚くようなこと聞いた?」
「あっうーん・・・。そうじゃないけど・・・でも。でも、今はいないなぁ」
心なしか、私の語調が暗くなった。そう、確かに私には付き合っている男性はいない。
「そっか・・・。サーシャにも素敵な人が現れるといいわね」
「あははっ、うん。ありがとう」

その夜私はベッドの上で、別れ際に言われたマリーの言葉を思い出した。
「サーシャはいつも勢いが良くて、元気がいいように見えるから、だからもっと女の子らしくするといいよ」
そんなの・・・分かってる。
でも、この性格ばっかりはなかなか変えられないし、今更突然私がマリーのような、
かわいらしいリボンやピンクやオレンジの洋服を着るというのも自分に合わなくて気持ちが悪い。
自分を変えたいと思ったことは何度もあった。
特に男勝りというわけではないけど、でも、この勢いのいい性格のせいで今までも何度も失敗してきたし。
マリーの言葉が、今夜はやけに頭に残って、なかなか寝付けなかった。

次の日。
寝付けなかった私は仕事に遅刻しそうになった。
「いっけなーーい!!」
目覚し時計を無意識のうちに止めていたみたいで、私は嵐のように身支度を済ませると、
急いで太陽の公園のカフェテリアに向かった。
そこが私の仕事場、私はウエイトレスをしている。
いつもパンツルックの私だけど、ウエイトレスの制服はもちろんスカート。
アルカディアでもかわいいと有名なカフェテリアの制服は、ちょっと私には恥ずかしい。
でも仕事中はそんなことなど気にしている暇はない。
ましてや今日は遅刻しそうになったから、制服に着替えた後の身支度の最後のチェックまでちゃんと気が回らなかった。
「いらっしゃいませ!」
ちょうどお昼近くになった頃。そろそろランチのお客さんも増えてくる時間に入って来た、一人の男の人。
今まで私はそんなことはないって思ってたけど、でも。今日初めて、ほんとにあるんだなって思った。

目が、その男の人から離れてくれなかったのだ。

入って来た男の人は白いサマーセーターを着ていた。かけていたであろうサングラスを片手にして。
何より印象的な真っ赤な髪の毛と、ブルーの瞳。私の目はその人から釘づけだった。
カツカツと靴音を響かせながらドアから離れ、目が何かを探すように泳ぐ。
ふと私にその視線がぴたっと止まった瞬間、私の心臓も止まったかと思った!
マリーから何度も何度も聞かされていたけど、ほんとに、男の人の視線で心臓が止まるような気分になるのは初めて!
「すまないが、このお店はどこに座ってもいいのかい?」
整った顔立ちから聞える声もまたとっても素敵で、私は身動き一つすることができなくなった。
いや、もしかすると呼吸も忘れていたかもしれない・・・。
まさか、自分にこんなことがあるなんて。
これが、いわゆる、その・・・一目惚れってやつなのかしら・・・。
男の人の素敵さと、自分に対する驚きとで私は動けなかった。
・・・でも。
「おい、君? 聞えているのか?」
もう一度男の人の声が耳に入ったとき、
私は自分が今どういう立場で男の人がどういう意味で質問してきているのかがようやくわかった。
「あっ、はい! どちらでもお好きな場所にお座りください!」
ロボットのように抑揚のない、必要以上に大きな声で私は返事してしまった。
うわっ、恥ずかしい・・・。でも男の人はそんなこと気にしていないみたい。
「ありがとう」
そう言った男の人の視線が私から逸れると、まるで魔法が解けたように私の体にも力が戻って来た。
その途端、訳も分からず私は、思わず厨房に走りこんでしまった。

フロアに背中を向けた姿勢で、私は、両手で自分の頬を触って確かめた。
熱い。まるで燃えているかのように熱い。
「サーシャ! お客様にお水と、オーダーをとってきて!」
オーナーがぼんやりしている私を叱ってきた。そうだ、私仕事中なんだ!
慌ててお冷をお盆に載せ、メニューを片手に赤い髪の男の人のそばへ再び近づく。
男の人は、このお店で一番良い席に座っていた。
大きな窓から見える噴水の景色をじっと見入っているよう。
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」
震える手でお冷とメニューをテーブルに置き、ドキドキしながら注文を待つ。
驚いたことに男の人はメニューも開かず、こう聞いてきた。
「ここにはカプチーノはあるかい、お嬢ちゃん?」
「あっ、はい、ございます」
「そうか。それじゃカプチーノを一つ頼む」
「はい! かしこまりました!」
私はメニューを引っつかむとくるりと踵を返して厨房に戻り、大きな声で言った。
「オーダー入ります! カプチーノ!!」

熱い泡のたったカプチーノをオーナーから受け取り、私は再び男の人のもとへそれを運ぶ。
いつもはまったく考えない動作なのに、なぜか今は、すべての動き一つ一つがとっても気になる。
お盆にカップを載せる時、お盆を片手に歩く時、厨房からフロアに出る時。
一つ一つの仕草が気になってしかたないのは、やっぱりあの赤い髪の男の人が私にとって気になるからだろうか。
フロアに出てもう一度男の人の席を見る。窓の外を眺めている男の人はそんな私のドキドキには気付いていない。
この店で一番良い席に座る男の人は、それだけでまるで一枚の絵になるぐらい素敵だった。
思わず見とれそうになる自分の頭を軽く振り、一歩、一歩と男の人に近づくと、
気配に気付いたのか窓の外から私に視線が向いた。
いやっ、今見られたら私!!
「お待たせしました、カプチーノです!」
反射的に声が上づり、必要以上に大きな声で言ってしまった恥ずかしさで頭の中が真っ白になった!!
「ありがとう」
後一歩でテーブルに一番近寄る、という、たった一歩のこの距離でうらめしい事件が起こった。

「きゃっ!!」

突然自分の体が揺らいだことに、私は気も動転した!!
後で分かったことだが、どうやら私は制服用のサンダルの長いリボンをしっかりと足に巻きつけていなかったらしく、
左足が緩んでいたようで、右足がふんづけて・・・。
とにかく、私はカプチーノのお盆を持ったまま倒れそうになった。
頭から床にぶつかる! そう覚悟して目をぎゅっとつぶった。
「危ない!」
お盆がひっくり返る音がしたのに、私は前のめりに腕を引っ張られて男の人の腕の中にいた。
えっ、えっ、腕の中!?
「危なかったな、お嬢ちゃん。ケガはないか?」
わっわっわっわーっっっっ!!!
私が倒れそうに成った瞬間に、男の人が腕を引っ張って助けてくれたみたい。
「はっ、はい!」
「そうか、良かった」
そう言うと男の人は真っ直ぐに私を立たせてくれた。
私はというと、男の人の腕の中にいたという事実で眩暈を起こしていた。
あっ、とりあえずお礼を言わなきゃ。
「あのっ、ありがとうございます」
「レディのピンチを助けるのは男の役目だぜ、お嬢ちゃん? 気にすることはない」
「はぁ・・・」
男の人がかっこ良くウインクをきめてくれたはいいけど、呆然とする私の目に次の事件が飛び込んできた。
なんと、私がひっくり返したカプチーノが男の人のサマーセーターをぐっしょりと濡らしていた。
私の視線の先に気付いたのか男の人は、それも気にしなくていいと言ってくれた。
「まあ、これは・・・お嬢ちゃんを助けた証とでも言うべきだろう? 男の勲章さ」
「く、勲章って・・・。でも、私、クリーニングに出してお返しします!」
こればっかりは譲れなかった。助けてもらった上、こんなに汚してしまうなんて・・・。
熱いカプチーノだったので、男の人が火傷していなかったかも気になったが、それは幸い大丈夫だったみたい。
なんとか説得して、私は男の人のサマーセーターを預かることにした。
「悪いな、お嬢ちゃん。俺のために気を使ってくれたみたいで」
「そんなことないです。助けていただいたわけですし。来週の日の曜日は空いてますか?」
「ああ、今のところ空いている。それじゃ来週もここに来るから、その時に返してもらおう」
「私、サーシャって言います」
「俺はオスカーだ。心に真っ赤な愛の炎を燃やす男、オスカーさ」
そう言って男の人はまた一つ、私にウインクを投げた。

その夜。私はマリーに日中あった出来事を電話で語った。
いつもなら逆の立場なのに、今日は私からマリーに語らずにはいられなかった。
いっぱいしゃべってしまわないと、この胸のドキドキがはちきれそうな気がしたから。
「ねっ、ねえ、サーシャ? 今、赤い髪の男の人のことをオスカーって言わなかった?」
マリーは男の人の名前に反応してきた。なんだかびっくりしているみたい。
「ええ。心に真っ赤な愛の炎を燃やす男、オスカーだって」
「サーシャ!! そっ、その方は守護聖様よっ!! 炎の守護聖、オスカー様よ!」
「えっ、ええーっっっ!!!」
電話のあっちとこっちで悲鳴が上がった。
「あなた、男の人に疎いからよく知らないかもしれないけど」
「知ってるわよ! しゅっ、守護聖様って言ったら・・・」
宇宙を支える9つのサクリアを持ち、女王陛下にお使えする騎士たちのこと。
それぐらい私だって知ってる。
でも、今まで守護聖様を見たことがなかったから、いや、名前すらそんなに気がしたことがなかったから。
「どうするの、サーシャ? 守護聖様にあなた、恋しちゃってるのよ?」
「恋・・・恋かぁ・・・」
その言葉に実感が湧かなかった。
確かにドキドキしてる。オスカー様を思うと胸が凄く痛くなる。
でも、これを恋という一言で片付けてしまうのは、なんとなく惜しい気がした。
「どうするもなにも、来週会う約束になってるから。・・・あとはその時考えるよ」
「そっか。私は、サーシャの恋を応援してるから」
私がいつもマリーにかけている言葉で、その日の電話は締めくくられた。

それから一週間。来る日も来る日もオスカー様を待ったが、一度も現れなかった。
やはり日の曜日の約束まで来られないつもりなのだろうか。
クリーニングは水の曜日には終わっていたけど、カフェテリアに持ってはきていたが一度も会えず。
マリーが教えてくれたけど、守護聖様はアルカディアのために日々忙しくそれているみたい。
そんな中でも、アルカディアの中で守護聖様や女王陛下や補佐官様たちは、よく民と交流をして下さるみたい。
色々なところで目撃情報があるらしく、うわさ好きのマリーはそういう類の話をよく知っていた。
反対に私はそういうのから疎かった。
だから、日の曜日に赤い髪の男の人を見ても気付かなかったわけなのだけど。
まさか、自分が恋する相手が、手を伸ばしても届かない相手だとは思っても見なかった。
それを思い出すたび、私はためいきで窒息してしまいそうだった。

そして。約束の日の曜日。
オスカー様はお店に現れた。先週と違い、スリムな甲冑と青いマントという姿で。
マリーが教えてくれた、守護聖様の衣装そのままだった。
そうしていれば、確かに、そのお姿から漂う神秘的な雰囲気や、
アルカディアの民は絶対に着ない甲冑などで普通の人ではないことは分かるのに。
でも、先週はサマーセーターだったから・・・。

「よう、サーシャ。今日も元気そうだな? 君に会いにきたぜ」
気さくに声をかけてくれたオスカー様。
オスカー様がお店に入って来たときから、私の心臓は早鐘のように鳴りっぱなしだった。
サマーセーターを、とりあえず早く渡してしまおう。そう思って声をかける。
「あのー」
「お嬢ちゃん、少し付き合ってくれないか?」
「えっ?」
「今日は見てのとおり天気がいい。できればお嬢ちゃんと散歩したいと思うんだが、どうだ?」
断れるはずもなかった。私は一も二もなく首を縦に振った。するとオスカー様も嬉しそうに微笑んでくれた。
「そうか。オーナー! すまないが、お嬢ちゃんを少し借りるぜ?」
厨房にいるオーナーに叫ぶと、オーナーの返事も聞かずに私に向かって手を差し伸べてくれた。
「さあ、行こうぜ、サーシャ」
まるでその言葉に吸い寄せられるかのように。反射的に私はそのオスカー様のその手に自分の手を伸ばしていた。

オスカー様が連れてきてくれたのは水晶の宮の奥の玻璃の森。
ここはすべてがガラスでできている。日の曜日だというのに、なぜか誰の気配もしなかった。
ガラスに響く足音は二人のものだけ。
一番奥にあるプレゼントの木の下に二人で並んで立つ。
「あのっ、サマーセーターを」
「綺麗な所だな、お嬢ちゃん」
とりあえずサマーセーターを返してしまいたい私を遮るように、オスカー様が話し掛けてきた。
「えっ、ええ。ここは綺麗ですよね」
「すべてがガラスで出来ている森なんて、アルカディアの民には驚かされることばかりだぜ」
「オスカー様、あのー」
「今日もかわいらしい姿をしているんだな、サーシャ」
視線がプレゼントの木から私に移ってきた! あっ、あの瞳で私をじっと見つめられると・・・。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん。うつむかないでくれ」
「はっ、はい・・・」
胸が痛い。息ができないよ・・・。
「こっちを向いてくれ、サーシャ。せっかくのデートなんだ、うつむかれたら寂しいぜ」
「デ、デート!?」
「そうだ。俺とお嬢ちゃんの二人きりのデートさ。なんだ、気付いてなかったのか?」
フフッとちょっといじわるっぽく笑うオスカー様。
私はと言うと、びっくりしたのと恥ずかしいのでやっぱり目の前の男の人を見れないで。
それに・・・気になることがあったからはっきり言ってみることにした。
「かわいらしい格好っていうのは、この制服のことですよね、オスカー様?」
「ん?」
「私、普段はこんな格好しないんです。スカートなんて、滅多に履かないんです。
 だから私、本当は」
「知ってるぜ、サーシャ」
「えっ?」
「俺は君の普段の格好を知ってるぜ。パンツルックの似合う、さっぱりとした女性だってな」
こ、これにはさすがの私も驚いて声も出なかった・・・。一体どこで私を知っていたんだろう。
「サーシャ。俺たち守護聖は与えられた屋敷の中でだけ生活しているわけじゃない。
 この民を知るために出歩くことだってあるし、
 守護聖といえど、休日には各々好きなことをしているもんなんだ。
 君たちとなんら変わるところはない」
「それじゃ、オスカー様はどこで私をご覧になっていたんですか?」
そう尋ねた時。
不意に私の顔をオスカー様の両手が包んで、うつむいていた顔をぐいって上に向けさせた。
オスカー様の整った、あのお顔が目の前に迫っていた!!
あまりに突然の出来事に、私は気が動転した。
「あっ、あのっ!」
「しーっ。聞いてほしい、サーシャ」
抗議の声を上げるとオスカー様は、小さな声で私を制した。
「サーシャ、俺は君を初めて見た時からどんな女性なのかと気になっていたんだ。
 君はいつも、親友の恋の話の聞き役ばかりだったはずだ。
 だから俺は、そんな君の恋の相手になってみたいとずっと思っていた。
 恋の痛みと甘さを知った君の、サーシャのことをこの腕で抱きしめてみたいと思ってしまったんだ。
 俺は宇宙全体の女性を愛していると公言しているが、この命を捨てても惜しくない相手は、
 生涯ただ一人の女性しかいないと思っているんだ」
私ははっとした!
語り終わったオスカー様が私のことを、力強く抱きしめていたからだ。
「君のハートに、俺の熱い恋の炎を燃やしたい。この俺の炎で、君に恋の甘さを教えたい」
「オ、オスカー様っ!! そんなっ!」
「何か困るのか、お嬢ちゃん? 俺には君の恋の相手はつとまらないのか?」
「そうじゃないです! でも、私はっ!」
「私は、なんだ?」
「私は・・・恋なんて似合うような女の子じゃないんです。女の子らしいところなんて・・・」
「一つもない、なんて言うわけじゃないよな?」
またオスカー様に先回りされた私は口をつぐんだ。
「サーシャ、君はかわいらしい女性だ。俺にはそう見えるんだぜ」
「分かりません、オスカー様」
「スカートを履くだけが女の子、というわけじゃないはずだ。
 さっぱりしていて勢いの良いところ、というのも、君の大事な個性だ。それに」
すっ、とオスカー様の瞳が細くなった。
「俺の前ではこんなにかわいらしく振舞ってるサーシャ」
右の親指でオスカー様は私の前髪を払って、指はそのまま私の頬を軽くなぜた。
「君はかわいい女性だ。でも、恋を知ればもっともっとかわいらしくなれる。
 キュートでチャーミングな女性になれる。そのために俺が、恋のレッスンをしてやろう」
「恋の、レッスン?」
「そうだ。俺は愛の炎を心に燃やす男だぜ? 君の心にもこの炎を伝えよう」
「どっ、どうやってですか?」
「こうしてさ」
クスッとオスカー様が微笑んだ。そう思った次の瞬間。

私は唇を塞がれた。

オスカー様の唇で。

あまりの出来事に私の目は白黒していたはずだけど。
でも。
でも、嬉しかった。
嫌なんかじゃ絶対にない! むしろこの瞬間がいつまでも続けばいいって思ってしまった。
オスカー様のキスで頭がぼうっとしてくる。オスカー様以外、何も考えられなくなりそう・・・。
そんな自分が信じられないけど、でも。
でも、嬉しいのはそれがオスカー様の言う恋の甘さなのかもしれない。

こうして、私とオスカー様のお付き合いが始まることになった。
毎週日の曜日は私とオスカー様の恋のレッスン日。
二人でデートして、それから・・・どうなるんだろう。
これから、私はどうなるんだろう。
私は・・・オスカー様が言うような、かわいらしい女性になれるのかしら。
不安だけどでも・・・。
それは先生であるオスカー様に任せるしかない。
当分、この心のドキドキは止むことを知らないみたいだ。

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久しぶりに創作を書きました。
オフラインでも大変お世話になっている翠へ、HPの開設祝いに送りつけた創作です。
リクエストを聞いたはいいのですが、いやー、なかなかに書いていておもしろかった!
どんなリクエストだったかはここでは明かしませんが、ちょっと綾水的に新たな試みで。
オスカー様は書いたことがなかったので、オスカー様に聞えるかどうか不安でなりませんが。
愛の炎を振りまいてくれてますか(笑)?