銀の大樹 〜キオクのカケラ1〜

真昼の太陽を緑の葉が優しく遮ることで
やっと見れるくらいの眩しい銀の髪
哀しい過去を秘める瞳は変わらない葉の色を写したような翠と
太陽にも勝る黄金の色

喉がひきつって上手く声が出せない。

「ア…リオス」

辛うじて出た名は、偽り。
一緒に旅していたときの言葉は、真実。
すべての気持ちをこの人に注いだなれの果ての私と、

「…お前、俺のことを知っているのか?」

すべての記憶を失って、まるで迷子のような瞳をしたあなた。
白い花が風に揺れて甘い臭いが鼻をくすぐる
駆け出そうと一歩出した足を止める様に。
止まっていた方がよかったかもしれない歯車を、
自分でむりやり動かしてしまった後悔と、
会う事によって気持ちがまた揺らめき出したことによって思い知った
弱さと自分への怒り。

「おい。お前、俺のこと…」
(夢じゃない…けど…どうしてここにいるの?)
「…おい。聞いてるか?おいっ!」
「はいっ!」
「だから、俺の名前だよ!お前さっきまでの話もから返事だったろ。」
「ごめんなさい。えっとあなたの名前はレ…アリオスよ。」
「ふーん…」

 それからしばらく他愛もない話を続けたが、
アリオス自身が自分の記憶の事について聞く事はなかった。

「あの。私そろそろ帰らないとレイチェルが心配するから。」
「ん?あぁ悪かったなつき合わせちまって。」
「平気。それよりまたお話にきてもいい?」
「そうだな…俺もあんたに色々聞きたいから気が向いたら来るさ。」
「気が向いたらって…すれ違いになっちゃうんじゃないかしら。」
「…昼に来るようにするさ。そうすれば確率は上がるだろう。」
「わかった。じゃあまた…」
「あっ忘れてた。お前の名前…」
「アンジェリークよ。」
「天使…か名前負けすんなよ!」
「なっ!失礼よ!」
「初対面な気がしねぇんだよ。じゃあなアンジェリーク。」

つきん…と胸が痛んだ。
このまま記憶が戻らない方がいいんじゃないかと思う。
私に会ったことで記憶が戻るきっかけになったとしたら…。

(…いっそ記憶が戻ってしまった時は、
私がバットかなにかで後頭部をこうガツンッ!
 と一発やれば記憶が消えないかしら…。)

本気で考えていますねアンジェリークは
リモージュ陛下共々天然です。

走りながら考えていたらいつのまにか
自室の前に立って溜息を漏らしていたのを、
レイチェルは見逃さなかった。

「アンジェリークどうしたの!?
帰りが遅いと思ったら、部屋の前で溜息の連続だし…。」
「ん…ちょっとね。つかれちゃったから寝るね。」
「午後からルヴァ様の部屋に行く予定だったのに
来なかったって言ってアンジェリークの部屋まで来てくださったんだよ。」
「わかった。明日必ず行くわ。その時謝るねおやすみレイチェル。」
「オヤスミ☆」

落ちてきそうな夜の星に願いを込めて一筋の涙を流す。

貴方が幸せになれるように
過去が甦っても立ち向かえる強さを彼に。
幾千万の星達に眠る神々よ
彼にこれ以上の鎖を与えないで。
彼に心の安らぎと平穏な日常を…。

冷泉院桜華様から続きをいただきました。
ちょっと天然なコレット。なるべく危ない手は使わないでしいものですが(笑)。
アリオスと出会い、会話し。二人はこれからどうなっていくのでしょう。
展開がものすごく楽しみですね!!

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